読了:街場のメディア論


「知性の不調」という言葉がなかなか重たいなと思った。世の中の出来事でなんだか変だなと思うことをひと言で言い表していると思う。メディアもそうなら一般市民もそんな状態にあって、つまらないところでギスギスする。まあ、メディアはそれが本性だとこの本には書いてあるわけだけど。

読みたい本をすぐに読むという願いの実現を妨害するすべての社会的要因は出版文化にとってマイナスである

たぶん、出版関係者はとりあえずこれには頷くだろう。だけど、「妨害」の中には「著作権の主張」も入っていると言ったら、途端に「それは違う」と言うだろうな。

この本では、「読書人」≠「消費者・購入者」だと言っている。ここを勘違いする出版人が多いから著作権の問題は不毛な議論になるのだろう。

本を書くのは読者に贈り物をすることである

 

人間たちの世界を成立させているのは「ありがとう」という言葉を発する人間が存在するという原事実です。価値の生成はそれより前には遡ることができません。「ありがとう」という贈与に対する返礼の言葉、それだけが品物の価値を創造するのです。

この文章は僕が著作権を主張する人々に対して抱いていた不信感の元凶を明確にしてくれた。読み手あっての書き手。視聴者あってのテレビ番組。これをビジネスの枠組みで捉えてしまうからおかしなことになる。

なんでもビジネスにする弊害は医療と教育の現場にも蔓延っている。そこでもやはり「ありがとう」が減っているということなのだろう。人類の叡智の結晶である医療と教育は、それ自体がその歴史的蓄積に対して感謝すべきものなのだ。というようなことも書かれている。

社会全体がギスギスするのも「ありがとう」が足りないからなのだな。

震災から時間が経ったらこれを忘れてしまうようじゃこの国はおしまいなのだ。

街場のメディア論 (光文社新書)
内田 樹

街場のメディア論 (光文社新書)
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