読了:南洋の喫茶店 -オセアニア現代誌-


「南洋の喫茶店」というタイトルとは少しイメージが違って、オセアニアの文化・政治・経済に関する考察を綴ったなかなか硬派な本である。

オセアニアというと、僕がイメージできるのはオーストラリアとニュージーランドくらいだ。しかしこの本で論ずる対象にしているのはそれ以外の地域。ミクロネシア・ポリネシア・メラネシアということになる。

たぶん大半の人はこの3つのネシア(島々を表す言葉)のそれぞれがどのあたりを指すのかもよくわからないのではないかと思う。実際僕もそうだった。いずれにしても広い太平洋に散在する島々のことである。

赤道を中心として南北に散らばる島々はそのまま南国ののどかなイメージだ。しかし、そこには植民地時代の痕跡がくっきり残り、今やもともとの宗主国の援助がなければ経済的に成り立たない島々という現実がある。島国ニッポンにおいてさえ離島と言われるようなサイズの島がひとつの国だとして、島内外の経済だけで現代社会と同じ生活水準を維持するのが無理なのは想像がつく。だからといってこの島々の人々に昔ながらの自給自足の生活に戻れというのは無理な話なのである。

それを植民地時代の宗主国の責任と言うのは簡単だが、世界の経済が発展を続ける中でこの島々も同じように発展するというのは大変難しい。難しいといってもそうしないわけにはいかない。このへんが現代世界の矛盾点を表しているといえるかもしれない。

経済発展を続けることは良いことなのか?それともただ人間のもつ宿業なのか?今、世界で起きているさまざまな事象を見るにつけ、オセアニアでこれから起きることが変革のヒントになるのではないかと考えた。

ただ、この本は1986年の本で、現時点のオセアニアの状況/世界状況とはずいぶん違う世界を描いているという難点がある。温暖化による水没とかインターネットの発達によってドメイン名の使用権貸与によるなにもせずに莫大な収入を得る国が国連加盟するなど状況は大きく変化している。現代のオセアニアがどんな状況にあるのか、ちょっと調べてみたい気がしてきた。

南洋の喫茶店―オセアニア現代誌
高橋 康昌

南洋の喫茶店―オセアニア現代誌

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