読了:国家の品格

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最近の書店では、プチナショナリズム系の本をよく見かけるようになった。景気がだいぶよくなってきたことで国民全体が自信を取り戻しつつあるってことがたぶん一番の影響なんだろうけど、もっと深いところには「戦後」が本格的に終わりつつあるってことがあるような気がする。
この本もそういう分類に入る本だと思う。とても過激な意見が書かれている。一昔前ならとんでもない批判にさらされそうな内容である。
ただし、著者はアメリカの大学で教鞭をとっていたこともある立派な国際人であって、偏狭なナショナリストではない。しかもタイトルからは想像もつかない数学者なのである。そして、さらに驚くことは論理の権化のような数学を研究している人でありながら論理一辺倒には大反対しているのだ。
読み進めて行くと、なるほど数学者であるから気づいたのだなと分かってくる。「あらゆる理系の学問において、美的情緒こそ最も重要」と言う。
論理が全てという考え方ではこの先の世界はうまく行かない。実はその対極にあるような「情緒」が大事であって、それを大切にしないととんでもないことになると言っているのだ。そして、日本人は「情緒」の世界が太古から得意なのであって、その考え方を広める必要があると言う。
「国家の品格」は「情緒」や「伝統」を大切にするところから生まれるのであり、カネがいくらあっても羨望はされるが尊敬はされない。だから今のニッポンは心配だと言っているのだ。
最初に書いたとおり、見方によってはかなり偏向しているといえないこともない。しかし、著者は最初にこういっている。

私は、自分が正しいと確信していることについてのみ語るつもりですが、不幸にして私が確信していることは、日本や世界の人が確信していることとしばしば異なっております。もちろん私ひとりだけが正しくて、他のすべての人々が間違っている。かように思っております。
もっとも、一番身近で見ている女房に言わせると、私の話の半分は誤りと勘違い、残りの半分は誇張と大風呂敷とのことです。私はまったくそうは思いませんが、そういう意見のあることはあらかじめお伝えしておきます。

要するに妄信的な読み方をされては困るとやんわり言っているのである。
多少過激ではあるが、歴史とか世界の見方についてなかなか面白い示唆に富んだ本だと思う。
国家の品格
藤原 正彦

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羞恥心はどこへ消えた? 満州と自民党 人は見た目が9割 日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 古風堂々数学者
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