黒と茶の幻想
今まで読んだ(といってもほんの数作品なんだけど)の中では一番中身を濃く感じた作品だったな。作品の中に出てくる4人の年代が僕自身の重なることもあって、感情移入しやすいというのもあるかもしれない。
僕たちくらいの年齢になって、こんな旅ができたら楽しいだろうなあと思うけど、そこはやっぱり物語だな。そう簡単に素直な自分に戻って話すことなど無理だろうと思うのだ。
恩田作品には高校時代というのがよく出てくる。たぶん作者自身にとってとても大切な時間がそこにあったのだろう。なんだか懐かしい時間がそこにあるようで、実は僕には共有できる時間がないようにも思える。描写の中にそういう時期をうらやむような気持ちを持つことがある。そのへんに僕が恩田作品に惹かれるなにかがあるように思う。
まだ読んでいない作品が結構あるから、気が向いたらまた新しい作品に手をつけてみよう。
hReview by んちば , 2006/05/03