この本、すごく面白い。普段何気なく使っている漢字の成り立ちがわかりやすく説明されているだけでなく、その背景となる古代中国の社会について考えをめぐらせる楽しみがある。
漢字は象形文字ということはなんとなく知っていても、どの部分がなにを表しているのかということについてじっくり調べることも考えることもなかったし、ましてどうしてそれが現在の漢字の意味になっているのかなんてほとんど考えることはない。この本はそういうことを楽しく紹介している。
たとえば「道」。しんにょうの部分は街路と足をくっつけたもの。これは旧字を見るとよくわかるのだが、なぜそれと文字通りの人の首がくっついているのか?この訳は是非本書を読んでほしい。古代文字が併記されていてそのあまりのリアルさにちょっとゾッとしたりする。
古代文字を手がかりに漢字を見直してみると、象形を単純に組み合わせたものであることがわかる。だから漢字は一文字一文字覚える必要はないものなのだ。しかもその組み合わせの裏にはいろいろな物語があるわけで、それを想像するのはとても楽しい。
現在の日本語の漢字はこれらの古代からの意味を考えずに簡略化してしまったので本当に意味のわからない記号になってしまっている。中国の簡体字にいたってはそれがもっとひどいのだということもわかった。何千年もの歴史を持つ文字だから無理もないのだけれど、逆に言うと漢字は何千年もその意味を維持してきているということでもあるわけで、それはある種の人間の認識に対する表現の合理性を証明するものでもあるのだな。
こうやって学べば漢字はとても楽しいのだ。
白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい
小山 鉄郎 白川 静 文字文化研究所
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