僕は推理小説が特別好きというわけではなかったので、松本清張を読むのは今回が初めてだ。入院中の暇な時間をつぶすために同室の人から借りなければひょっとしたら一生読まなかったかもしれない。
「点と線」といえば名作のうちに入ると思うのだが、読んでみて思ったことは、これは今となっては古典の範疇に入るものだなということだった。簡単に言ってしまえば「おもしろくはない」のである。
なにがそう感じさせるのかというと、たぶん単純に推理上の論理を積み重ねただけの文章がつまらないのだと思う。日本全国をまたにかけた犯罪なのに、会話にほとんど方言が入らないなんてぜんぜんリアルさを感じないし、風景の描写も頭に景色が浮かんでくるようなものはほとんどない。鉄道の時刻表を使ったアリバイ工作をどうやるのだろうと思ったら飛行機使っちゃったりして、ちょっと反則っぽい感じもある。そういうところが発展途上を感じさせるのだろう。
僕は鉄道全盛時代にかろうじて引っかかっている世代だから、鉄道での長距離移動とか連絡船の乗船名簿なんかも経験があって小道具としてリアルに思い浮かぶのだが、今の人にはきっとピンと来ないのだろうなあと思った。なにより電話をあまり使えなくて電報を使わざるを得ないなんて、想像もできないだろうなあ。
まあ、こういう作品があって、今のミステリー作家があるわけだし、昔の作品より今の作品のほうが面白いのはあたりまえ。やっぱり古典として読むのが正解なのだろうな。
点と線
松本 清張
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