日々

読了:ノルウェイの森

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本の情報

どんなことが書いてあるのか?

  • 死とともに生きること

読んでどんなことを考えたか?

僕はごく若いときに自分の道の選択を誤ったのかもしれないと時々思う。比較的生活の苦しかった家で育ち、急いで自分で稼げるようになるにはと考えて、早くから工学の道へ進んだ。当時学費はまだ安く、奨学金がとれたので授業料をそれでまかない、他にかかる費用はアルバイトをしてなんとか工面できた。自分の家から通える範囲で役に立ちそうな勉強ができる学校といったら工学を学ぶしかなかったのだけど。

学校は苦しかった。実は僕は工学にはさほど興味がなかったのだ。たまたま興味があって楽しくて仕方がなかったコンピュータの勉強だけは当時は高価だった設備を使うことを目的にすることでそこそこ良い成績をとったものの、それ以外の科目は散々の成績で、ずっと仮進級(落とした単位がある)だった。

工学の学校だったのに、僕は文系の勉強がしたくて仕方なかった。なかでもたった一つだけあった選択科目の心理学にとても興味を持った。非常勤の講師はカウンセリングを専門としていて、あまり心理学らしいことを学べなかったのでがっかりした。

なんとか修業年限で卒業し、ソフトウエアの会社に就職したが、そこでは僕が学んだコンピュータの技術は全く使えなかった。学んだことが役に立ち始めたのは10年ほど経った頃からで、すでに仕事に幻滅していた頃だった。それから20年近く、なんとか頑張ってきたが、仕事に対する幻滅観は増すばかりで、ソフトウエア業界のブラックな就業環境にやられてうつ病を発症してしまった。会社や社会で対策が取られ始めたのは10年くらい後で、僕のうつは結局取り残されたままだ。

うつ病に苦しむ中で、心理を学ぼうと思い、放送大学に編入した。心理学を基礎から学んだ。僕はもう40代の半ばになっていたが、それはとても楽しいものだった。

十代の頃、フロイトの精神分析の本を読んだ。性と深層心理のつながりというのが面白かったが、実際に精神分析なんてものは身の回りになかったし、病院の精神科は今よりずっと遠い世界だった。そんなことを思い出しながらフロイトを学び、ユングの分析心理学に出会った。堅苦しいフロイトの理論と違って、イメージの世界を大事にするユングの世界が好きになった。

箱庭とか、絵画法とか、バウムとかが今でも好きだ。ただ、専門的に研究するのは大変で、僕は生活を維持するのに精一杯だったし、うつも患っていたのであまり深く追求することはできなかった。心理の世界と医療の世界の間には分厚い壁があって、うつに心理面からアプローチするのは費用がかかって難しかった。

書店に「赤の書」が置いてあるのをパラパラとめくってみたことがある。ユングの豊かな深層心理の世界がそこにはあった。心の世界は複雑で、入り組んだ迷路のような感じだった。病んだ状態もそうでない状態も、はっきりと区別できるものではないことを示していた。そして、死は身近なものとして現れる。

死と隣り合わせで生きていくということがどんなことか、僕はずっと考えていた。そして、それはそういうかたちでいつもそこにあるということを学びつつある。

そういうことを深く納得した。

面白かった?

僕は村上春樹の作品を数冊しか読んでいない。この作品も最初に出たときの鮮やかな装丁は気になったし、ベストセラーでもあったのでいつか読もうと思っていたのだが、なかなか手には取らなかった。最近たまたま家の近くの区民センターで古本市をやっていたときに見つけて、何かわからないがこれはチャンスだと思って買った。

他に読む本がたくさんあって読み始められなかったが、おとといやっと読み始めた。物語の中にぐいぐい引き込まれて、とても苦しいなと思いながら読み終えた。

まとめ

買った本には映画化の帯がついていたが、こんなの、どうやったら映画になるんだろうと思った。内面にこもっていて、他人の解釈を拒むような作品を映画化するなんて、ずいぶんだいそれたことをするものだなと思う。もちろん映画を見る気はない。でもこの本は何度も読み返すに違いない。そういう魅力がこの作品にはある。







書いた人

nyao

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本を書きたい人にITの基礎から学んでもらって、Kindleで著者デビューするまでをサポートします。 ITってよくわからないという人のために勉強会をやっています。 「読書と編集」という屋号でお仕事をしています。

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